開催の趣旨
メインテーマ
サステイナブル産業デザイナー「酵母」 ~酵母の魅力を支える基礎応用研究~
趣意
酵母関連団体が共催する「酵母合同シンポジウム」は、50年以上の歴史を有し、酵母の基礎研究から応用研究までのシームレスな連携体制を構築してきた場です。本シンポジウムにおける個の連携は、組織の連携へと発展し、産業イノベーションへ大きな貢献をしてきました。前大会は、実行委員長 高木博史先生(奈良先端科学技術大学院大学)が牽引し、コロナ禍を経て、広島の地で開催され、対面の価値が再確認された大変魅力的な大会でした。この度、「サステイナブル産業デザイナー「酵母」 ~酵母の魅力を支える基礎応用研究~」をテーマとする第25回酵母合同シンポジウムを初めて新潟の地で開催することになりました。新潟県は、米と水、そして米百俵に象徴されるように多くの人を育て、これらを活用した発酵・醸造産業と共に成長を遂げ、発酵・醸造文化を構築してきた地です。本産業を支えてくれている酵母の歴史あるシンポジウムを開催できることとなり、講演会だけでなく、発酵・醸造文化を体験する素晴らしい懇親会の機会を皆様と共有することにより、新潟は皆様とさらに成長を遂げられそうな予感がします。
酵母研究はヒトをはじめとする真核生物のモデル生物として、様々な生理現象の分子レベルでの理解に多大な貢献をしてきました(基礎研究)。同時に酵母の発酵・醸造の担い手としての能力の活用と改変による研究(応用研究)も進み、産業へ多大な貢献もしてきました。食品産業(パン、ビール、日本酒、ワイン、チーズ、味噌、醤油等)、医薬品産業(インスリン、ワクチン等)、バイオ燃料産業(バイオエタノール等)、化粧品産業(界面活性剤等)だけでなく、バイオスティミュラントとして農業への貢献にも注目が集まりつつあります。また、大量の生物情報のデータ化と情報解析・デザイン技術の革新により、スマートセル(高度に機能がデザインされ、機能が制御された細胞)の構築が可能になってきていますが、この分野においても基礎及び応用研究成果が充実している酵母は多大なる貢献をし、次世代の産業の中核になっていくものと期待されています。
酵母は、様々な糖類、アルコール類を資化し、多様な物質を生産できます。このユニークさは、酵母のポテンシャルの1つです。まだまだ自然界に眠っている酵母という財宝を掘り起こすことができれば(探索)、我が国が誇る育種・培養技術を介して、世界の発酵産業を牽引し続け、SDGs、バイオエコノミーのサステイナブルな世界を切り開く力が、酵母には備わっているはずです。
本合同シンポジウム大会では、酵母研究の基礎の大切さと応用の素晴らしさを体験することはもちろんですが、酵母のユニークさ(資化能力、物質生産能力)にも注目し、酵母の発酵デザイナーとしてのポテンシャルを感じてい頂きたいと思っています。そこから得られる新鮮な発想と広い視野を持って、分野を開拓すること、さらにはアカデミアと企業の融合・発展が、これからの酵母研究の新たな展開を生み出す原動力なることを期待します。
高専や大学の学生から大学、公的研究機関、民間企業の若手研究者・技術者まで、酵母をはじめとする微生物に関わる皆様の積極的な参加をお待ちしております。
第25回酵母合同シンポジウム実行委員会
委員長 高久洋暁